読書

「若手育成の教科書」を読んだ

職場で若手育成について考える機会が多い中、直球のタイトルの本が出版されたので読んでみた。

以前は、新卒1年目で社長だの管理職だのとサイバーエージェントは何を考えてるんだ? と思っていたけども、本書を読んだら見事に腹落ちした。

どんな本か

サイバーエージェントで行われている『抜擢』をベースにした若手育成について書かれている。ある程度裁量権があり、若手育成に関わるビジネスマン、いわゆる中間管理職やチームリーダーのようなポジションを対象読者としている。

2021年11月30日発行。ダイヤモンド社。著者はサイバーエージェントの常務執行役員CHOを務める曽山哲人氏。

なぜ読んだか

新卒1〜3年目の若手中心で構成されたチームをマネジメントしており、若手育成についての情報収集がしたかった。

サイバーエージェントについては、新卒入社後すぐに子会社社長を任せたり、管理職の2割が入社3年目以下の社員で構成されるなど、度々ネットニュースでその『抜擢ぶり』を目にしていたので興味を惹かれていた。

要約

ひとことで言うと、「期待をかけて責任者に任命することで、若手は伸びる」を説いている本。

本書の中で語られる重要なキーワードが『抜擢』と『決断』
(『失敗』と『学習』もキーワードとして登場するものの、こちらは比較的よく見かける論だと感じたので上記2つをピックアップした)

抜擢

抜擢というと管理職や役員などへの昇進をイメージしてしまうが、本書での抜擢は昇進に限らない。プロジェクトのリーダーや、何らかの仕事の責任者、飲み会の幹事も抜擢に含まれる。重要なのは「何かの責任者になること」だそうだ。

加えて重要なのが、ただ責任者として任命するのではなく「言わせて、やらせる」。本人が「やります!」と宣言し、それを承認することで本人に自責の意識が生まれる。一方的な任命ではやらされ感が出てしまい、結果的に他責思考に繋がる。

抜擢する際は、言葉にして期待をかけることで本人のやる気と自走スイッチを入れる。この期待のかけ方次第で成長に繋がるかどうかが決まる。抜擢とは期待をかけること。

抜擢は優秀な若手を選んで行うのではなく、全員に対して行う。パフォーマンスが出ていない人でも抜擢によって成長する可能性がある。そのためには、『抜擢もれ』『抜擢不足』が起きていないかを常に意識する。これらは、抜擢して失敗するリスクよりも、抜擢しないことによるで成長鈍化の方が高リスクという考えに基づいている。

決断

抜擢によって責任を負った若手を待ち受けるのが決断。決断のスピードが仕事のスピードや成果を左右する。決断に慣れさせるのが重要。よい決断を素早く行うには決断経験を重ねるしかない。

若手がスピーディに決断したら、決断の早さを褒めると共に、たとえ結果が悪い方に転がったとしても早期決断によるポジティブな面をフィードバックする。早い決断が良いという意識を持ってもらう。

自分がどんな決断をしたのかは案外意識していない。そこでセルフや1on1で決断の振り返りを行う。何をどの時点で決断したのか、どんな情報を根拠に決断したのか、内省することで決断のサイクルを回す。

感想

得るものがある本だった。

元々抜擢が必要であるという認識は持っていたものの、抜擢対象を狭めて考えていたと気付けた点は大きい。また、抜擢の例が示されていたことも、抜擢内容の大小を柔軟に考える助けになった。私の職場ではストレッチゾーンという言葉がよく使われるが、本書の抜擢はストレッチゾーンと自責思考がセットになったイメージだ。自責思考を持ってもらう働きかけは若手育成において難しいポイントだと感じるので、そこに対する一定の考えが示されていたのは参考になった。

『決断』の重要さについても自分なりに整理するきっかけになった。ちなみに私は『意思決定』という言葉を使うことが多いが、決断の方が端的でカッコいい気がした。

最後に、以前の職場で働いていた頃、仕事人として一番成長したと実感できる1年(技術者としてではなく)があったのだけど、今思えばその時がまさに抜擢に近い状況だったなと思う。その時の上司には期待をかけてもらっていたし、ストレスは多かったもののたくさんの決断経験によって決断力も磨かれた。本書に一定の共感を覚えたのもこの時の経験が大きい。

今度は自分が若手にそういった経験をさせていかないといけない。

改めて、若手を成長させられるおじさんを目指していくとする。


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