「集中力はいらない」を読んだ
職場の上司がおすすめしてくれた、森博嗣さんのエッセイ「集中力はいらない」がなかなか興味深い内容だった。
森博嗣氏の小説はS&Mシリーズをはじめ、たぶん5〜60冊は読んでいるのだけど、エッセイを読んだのはこれが初めて。
どんな本か
2018年3月15日発行。SB新書。著者は元大学助教授で小説家の森博嗣氏。タイトルの通り、「集中することは良いこと」に対するアンチテーゼを扱ったエッセイ。情報過多時代において人間の持つ能力を発揮するには、集中せずに分散させる頭の使い方が重要であることが説かれている。
所感
目から鱗な本だった。私自身集中できない方の人間だと自覚しているものの、どちらかと言えば「集中至上主義」の考えを持っていた。特に仕事においてはコンテキストスイッチが多いことに課題を感じていて、「どうすればひとつのことに集中できるか」に考えを巡らせることが多かったように思う。
著者が述べるように、創造的な発想は集中している時よりも、むしろ散歩や入浴中などのリラックスしている時に生まれることが圧倒的に多い。意識が集中している先には答えはなくて、脳内の様々な情報を結びつけることで発想が生まれることを考えると、発想のために意識を分散させるのは理に適っている。
「人間らしくもっと思考しろ」「集中するな、分散しろ」「無理せずゆったり生きろ」
全体を通して感じたメッセージは大きくこの3つ。特に思考することの大切さについては大事な視点を得られた。
気になったフレーズのメモ
- 集中することは、機械のようになることを求められている
- 集中は思考を排除してしまう 例)運転中の考え事
- 天邪鬼な人、発想が集中しない人は自分以外のグループを理解でき、立場の違う人を尊重できる
- 考えていないことに恐怖心を持った方がいい
- 思考することが人間の強み
- 思考ができるようになるには思考するしかない
- 読書や検索で答えとなる情報をインプットするのは思考ではない
- 頭に思い浮かべて選択することは思考ではない
- 仮説を立て、なぜだろう?どうなっているんだろう?を考えることが思考
- 何でも白黒つけようとしない
- 今すぐどちらかを選んで行動しなければならない場合を除けば、常に両方の意見を持ったまま採決せず保留の方が良い
- 人間は固有名詞を覚えることで記憶領域を節約している
- 畑に種を蒔かず、秋になって自分の畑にだけ実りがないと悩んでいる人には即効性のあるアドバイスはできない
- リーダーとは、自分が抱える部下に「問題を与える人」
- 問題を探す、課題を見つけるには分散思考が必要
- 「自分は○系だから▲▲は無理」と別分野を拒んだり目を逸らす姿勢は集中思考
- 自分を縛っているのは自分
- 反対意見を持つ相手の、部分的に正しい理屈を認められるかどうかが、その人物の頭脳の明晰さを表す
本書を読み終わって、自分はどう行動を変えるか、を考えてみた。多分大きくは変えないだろうけども、物事に対してもう少し仮説を立てて考える癖を付けてみるとか、無理に集中せずに色々な本を読んでみようとか、そういうことを思うなどした。