ダイクストラ法を完全に理解した
競プロ典型90問 013:Passing でダイクストラ法を完全に理解したので覚書きを残す。
ダイクストラ法の用途
ダイクストラ法が活躍するのは、競技プログラミングで頻出な単一始点最短経路問題。ある頂点から出発して、各頂点を辿る際の最短経路と最小コストを見つけることができる。
最短経路問題には幅優先探索(BFS)を使った解法があるが、ダイクストラ法の場合は辺に重みがあるグラフ(=通る経路によってコストが違う問題)でも適用できる。
ただし、負の重みが存在する場合はダイクストラ法を適用できない。負の辺が存在する場合はベルマンフォード法を使う。
ダイクストラ法のアルゴリズム
- 始点にコスト0を書き込む
- 未確定の頂点の中から、現時点で最もコストの小さい頂点をひとつ選び確定させる(必要な場合はルートを記録する)
- 2で確定した頂点と直接つながっている未確定な頂点に対して、始点からのコストを計算し、記録されているコストより短ければ更新する
- 全地点が確定していれば終了、そうでなければ2に戻る
2の『現時点で最もコストの小さい頂点』を選ぶところで、優先度付きキューを使うと計算量を抑えることができる。
プログラムでの実装
競プロ典型90の013:Passingで実装したものを貼っておく。理解力が乏しいのと、数日経つと記憶から薄れていくと思ったので大量にコメントを入れた。
PriorityQueue
クラスは先日実装した優先度付きキューを流用した。
頂点のコストが確定したことを記録する配列が必要かと思ったが、確定判定してスキップする処理を入れても処理時間がほとんど変わらなかったので省いた。
013:Passingの回答(Ruby)
def array(n,ini=nil); Array.new(n) { ini } end
class PriorityQueue
attr_reader :heap
def initialize
# ヒープ配列
@heap = []
# 小さい順に優先度が高い
# [ノード番号,暫定距離]のペアで格納される
@comp = -> (x,y) { x[1] < y[1] }
end
def <<(new_one)
# 新規アイテムを末尾に入れる
@heap << new_one
# 末尾から上っていく
cur = @heap.size - 1
# ヒープ再構築
while (cur > 0)
# 親ノードの要素番号を取得
par = (cur - 1) >> 1
# 追加アイテムより親の方が優先度が高くなったら抜ける
# = 追加アイテムはcurの位置に収まるのが適切
break if @comp[@heap[par],new_one]
# 親の方が優先度が高くなるまで、子に親の値を入れていく
# 親子入れ替えを行うと計算量が増えるため、子の値を順に上書きして最後に新規アイテムを入れる
@heap[cur] = @heap[par]
cur = par
end
@heap[cur] = new_one
self
end
def top
return nil if @heap.size == 0
@heap[0]
end
def deq
latest = @heap.pop # 末尾を取り出す
return latest if @heap.size == 0 # 最後の1個ならそのまま返す
# 末尾を根に置き換える
highest = @heap[0]
@heap[0] = latest
size = @heap.size
par = 0
l = (par << 1) + 1 # 左の子
while (l < size)
r = l + 1 # 右の子
# 優先度の高い方の子を交換候補にする
cld = r >= size || @comp[@heap[l],@heap[r]] ? l : r
# 親の方が優先度が高ければ交換をやめる
break if @comp[latest,@heap[cld]]
# 子の値を親に入れる
@heap[par] = @heap[cld]
# 親
par = cld
l = (par << 1) + 1 # 左の子
end
# 根に仮置きした値を適切な位置に置く
@heap[par] = latest
highest
end
def clear
@heap = []
end
end
N,M = gets.split.map(&:to_i)
A,B,C = M.times.map { gets.split.map(&:to_i) }.transpose
graph = Array.new(N+1) { Array.new }
M.times do |i|
# 街Aから街Bまでの距離
graph[A[i]] << [B[i],C[i]]
# 街Bから街Aまでの距離
graph[B[i]] << [A[i],C[i]]
end
# 頂点nから各ノードへの最短距離を配列で返す
# 1. 始点に0を書き込む
# 2. 未確定の頂点の中から、現時点で最も距離の小さい頂点をひとつ選び確定させる(必要な場合はルートを記録する)
# 3. 2で確定した頂点と直接つながっていて、かつ未確定な頂点に対して、始点からの所要時間を計算し、記録されている時間より短ければ更新する
# 4. 全地点が確定していれば終了、そうでなければ2に戻る
def dijkstra(n,graph,num)
# 優先度付きキュー
# 最短距離未確定の頂点の確定待ちキュー
q = PriorityQueue.new
# 関数が返す最短距離配列(添字0は不使用)
# 全要素最長距離で初期化
dist = array(num+1,Float::INFINITY)
# [1] 始点の最短距離を0で設定
# 始点と最短距離のペア
dist[n] = 0
# 経路を保持する(問いには不要だが学習用として)
prev = array(num+1, -1)
q << [n, 0]
# キューが空になるまで続ける
# 確定待ちがいない = すべてのノードが確定している
while (q.heap.size > 0)
# [2] 未確定の中で最も優先度が高い(始点からの最短距離が短い)街Pの情報を取り出す
# posは確定
pos = q.top.first
q.deq
# [3] 2で確定した街と直接つながっている街をすべて見る
graph[pos].each do |g|
to = g[0] # 行き先の街
cost = g[1] # 街Pから直接行く場合のコスト
# 最短距離配列の更新(toへ行くための最短距離が知ってる距離より短い場合)
# 確定済頂点の場合、dist[to]より小さいdist[pos]+costが存在しない為、この分岐に入らない
if (dist[to] > dist[pos] + cost)
# dist[pos](始点からposまでのコスト) + posからtoまでのコスト
dist[to] = dist[pos] + cost
prev[to] = pos # toを通ってposに着いた経路記録(最後に記録されたものが最短なので上書き)
# 未確定の頂点を確定待ちキューに入れる
q << [to, dist[to]]
end
end
end
dist
end
dist1 = dijkstra(1,graph,N)
distN = dijkstra(N,graph,N)
(1..N).each do |i|
puts dist1[i] + distN[i]
end
参考になった動画
予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」というチャンネルが圧倒的にわかりやすかった。この動画を見ながら、頂点7〜8個くらいの問題をノートで手計算すると格段に理解が深まった。
ダイクストラ法を理解しようとネットサーフィンしていた時間、最初からこの動画を見ていれば大分節約できたのではと思う。
参考文献
グラフに関する解法は学習していてとても楽しい。まだ自然言語の問いを適切に解法と結びつけるところまで使いこなせていないので、精進したい。